高齢者歯科SENIOR

高齢者歯科について

高齢者歯科とは

現在の日本では高齢化が進み、2018年の段階で超高齢化社会に突入していると言われています。これは医療の発展や生活の質が上がることにより平均寿命が延びたこと、少子化により起こっていると言われています。

「平均寿命が延びた」これはとても素晴らしいことで元気な高齢者の方が増えてきています。しかし高齢者になればなるほど若年者にはないお口のトラブルが多くあります。私たち歯科医師は患者様に対して柔軟な対応や治療が必要です。

「削って詰めて」だけではなく高齢者に対して身体の健康を考慮し、お口の中のどの機能が衰えていてトラブルが起きているか正確に診査診断することでこれからの人生がより楽しく健康でいられると考えております。これから高齢者で起こりえるトラブルと治療法をお伝えしていけたら思います。

高齢者に起こるお口のトラブル

歯の根元の虫歯が増加

年齢を重ねることで歯ぐきが下がり、歯の根元が露出されることで若い人には少ない根元の虫歯が増加します。歯の根元の形態は歯ブラシでは上手く当てることができず、歯間ブラシなどの器具を必要とします。

根元の虫歯が進んでしまうと神経を取らなければならないリスクや歯が折れるリスクが非常に上がります。さらに高齢者になると唾液の分泌が少なくなり、唾液の作用の一つである自浄作用が下がります。これも虫歯ができてしまう原因とされます。

歯周病の悪化

日本の高齢者の半数以上は歯周病の悪化がみられ、深い歯周ポケットが確認できます。歯周病が悪化することにより歯ぐきが腫れ痛みや臭いなどの症状、最悪の場合歯を抜いてしまうケースがあります。

歯を失うことで高齢者は入れ歯を使用し、入れ歯を支える歯の負担が大きくさらに歯周病が悪化し抜歯のリスクになります。これらを防ぐためにも日頃からの口腔ケアが大切です。

唾液の分泌量の低下

年齢とともにお口の機能が衰えることで唾液が少なくなります。また糖尿病やシェーグレン症候群などの病気や薬の副作用による唾液分泌量の低下も高齢者には多くみらます。

唾液は粘膜を保護し細菌の付着を低下させ、洗い流す作用があり、少ないと虫歯・歯周病の悪化、味覚障害、嚥下障害などの症状が現れ、生活に支障をきたしてしまいます。唾液を分泌させるためには生活改善をし、唾液線マッサージや粘膜を湿潤されるオーラルケアが必要になります。

歯がない人生はストレス

高齢になると過去に治療した歯が再感染し虫歯になる、歯周病の悪化が原因で歯を抜かなければならないことが多いです。そして抜きっぱなしで治療をせずに放置するとお口の崩壊が始まります

抜歯した後の治療法は入れ歯・ブリッジ・インプラントがありこれらの治療を受けずにそのままにしておくと少しずつ歯並びが変化し噛み合わせが合わなくなり、これら3つの治療手段が適応にならず、適応させるために矯正の必要性が出てくることで、より高額な治療費がかかります。

また歯が抜けた状態を放置することで物が詰まり、汚れが溜まることで口臭に繋がり、さらに見た目にも大きく影響するため口元を隠しながら話す癖や大きく笑えなくなってしまうことがあります。歯のない人生は多くのストレスをもたらし、生活の質を落としてしまいます。

歯周病による身体のトラブル

歯周病とは細菌が歯と歯ぐきの間に入り込み、そこで細菌感染し炎症が起こることで歯を支える歯周組織である歯槽骨が溶けだす病気です。これが深刻になると抜歯をしなくてはならない状態になります。

さらに歯周病に罹患することで様々な病気を招く可能性があります。歯周病を予防することでお口の中の健康だけでなくお身体全体の健康を守ることができます。今回特に多く関係する5つの病気を紹介していきます。

  • 誤嚥性肺炎誤嚥性肺炎とは体内に取り込まれた細菌が器官に入り込み、肺に感染する病気で、お口の中が不衛生な状態が続き、歯周病菌が増加することで体内に取り込まれる細菌数も増加し誤嚥性肺炎を引き起こしやすいといわれています。高齢者は歯周病を放置することで食事や睡眠時に体内に歯周病菌が多く取り込まれ、発症のリスクが高いです。誤嚥性肺炎を予防するために正しい口腔ケアが必要になります。
  • 心疾患(狭心症・心筋梗塞)狭心症や心筋梗塞は動脈硬化により血液が心筋に送られず、胸の痛みが起こり、心臓の機能が低下・停止することで死に至ることがある病気です。原因は血管の詰まりによる動脈硬化によるものですが、歯周病菌が心臓や血管に送られ、これが刺激となり動脈硬化を促進させる物質を放出します。これにより血管内が細くなり血液供給がままならない状態になってしまいます。心疾患や誤嚥性肺炎は共に死をもたらす病気でもあります。定期的にお口の中をメンテナンスすることをおすすめしています。
  • 糖尿病糖尿病とは体内で生成されるインスリンが異常をきたすことで食べ物を上手く代謝することができなくなり、血糖値が上昇し、様々な症状が起こる病気です。歯周病菌がどのように関係していくかというと、歯周病菌が体内に取り込まれることでTNF-αと呼ばれる物質を出し、インスリンの働きを阻害してしまいます。これにより血糖値のコントロールができず、血糖値が下がりづらい状態になり糖尿病を招く結果となります。
  • 早産歯周病が悪化することで歯周病菌が体内に取り込まれ、血中に入り込み胎盤を通じて胎児に感染するリスクを高めるといわれています。これにより低体重児早産を招き大切なお子さんに危険が及びます。大事な命を守るためにも日頃のケアが大切です。
  • 骨粗鬆症身体の骨密度が減少し骨が弱くなることで、少しの転倒で骨折しやすい状態を招く病気です。この病気にかかりやすいのが閉経後の女性で、エストロゲンが減少し骨代謝が悪化し骨がもろくなります。エストロエンが減少することで顎の骨ももろくなり、歯周炎を悪化させ歯周病を深刻にしていきます。

口腔ケア

口腔ケアについて

高齢者になると当たり前だと思っていたが難しくなることがあります。その中で歯医者が関係するものが「噛む」「飲み込む」です。

この動作は若い時は当たり前に行えたと思いますが、高齢になると唾液の分泌量が低下することで味がわからなくなり、飲み込むことが難しくなります。また歯を失い入れ歯を使用することで天然の歯を使っていた頃と比べて上手く食事が出来なくなり、食事の楽しさが失われます。さらに筋肉量が低下することで噛むことも疲れ、飲み込むのも一苦労です。

これらを少しでも緩和させこれからの長い人生を楽しく過ごして頂きたいと思います。お口の中の清掃だけでなく、お口の機能を向上させる知識も身につけましょう。口腔ケアは不快感があっては継続できません。口腔ケアとは気持ちが良いということを実感しながら行いましょう。

清掃グッズ

歯ブラシ

高齢者は虫歯の心配ももちろんありますが、歯周病の予防に重きを置いた歯ブラシを選ぶことをおすすめします。ブラシの硬さは「やわらかめ・ソフト」を選びましょう。またヘッドは小さいタイプを選び奥まで歯ブラシが届くものを選び、持ち手は大きめなものを選びましょう。

持ち手が大きいとしっかりと掴め、力を加えやすいです。歯ブラシはペンを持つ持ち方で小刻みに細かく1~2本を磨きます。2種類の磨き方を紹介します。この2つの磨き方を意識して日頃のブラッシングを行いましょう。

  • スクラビング法…
    歯ブラシの毛先を歯の表面に垂直に当てて小刻みに動かします。
  •  
  • バス法…
    歯と歯ぐきの境に歯ブラシの毛先を45°に当て振動させるように小刻みに動かします。

フロス

フロスは使いやすいものを選びましょう。使い慣れているもので結構ですが、高齢者におすすめは糸巻きタイプのノンワックスタイプです。ホルダー付きのフロスだとすぐにたわんでしまい力が上手くかけられないことがあります。

ワックスタイプは若い方にはおすすめですが、高齢者では汚れを優先してとって頂きたいのでノンワックスタイプがおすすめです。

フロスの使い方はフロスを40~50センチにカットにフロスの端から中指に2回程度巻き付けて固定し両手の親指と人差し指を使ってフロスをつまみます。フロスを歯と歯の間にセットしのこぎりのように動かします。通ったら片側の歯に押し当てながら引き抜き。同じ動作を反対側でも行います。

歯間ブラシ

歯間ブラシは歯と歯の間の隙間に合わせてサイズを選びましょう。サイズの間違えてしまうと歯ぐきを傷つけ逆に歯ぐきの退縮に繋がります。お口の中を確認してみて、サイズがわからなければ歯医者さんに相談してみましょう。

  • SSS1/SS2サイズ:歯ぐきが退縮しておらず、挿入しても痛みが生じない
  • S3サイズ:歯ぐきが少し退縮
  • M4/L5サイズ:歯ぐきが大きく退縮、歯ぐきが下がり黒い三角が見える
 

使い方は口を大きく開けずに歯と歯の間に挿入し、左右に動かします。口を大きく開けすぎると歯間ブラシを挿入するスペースが確保しづらくなります。頬を少し引っ張りながら挿入しましょう。

舌ブラシ

舌に汚れが付着していると不衛生な状態であり体内に細菌が入り込むリスクが高まります。しかし舌を無理に清掃しようとすると傷の原因になります

柔らかいタイプで奥までしっかりと清掃ができる柄の長いものを選びましょう。水に染み込ませて使用し舌の奥から手前に動かします。使用後は水流で洗い、一か月で一度交換しましょう。

スポンジブラシ

自分で口腔ケアが難しくなりお口の中の粘膜に汚れが溜まってしまう高齢者に使用します。スポンジブラシを使用することで口腔内に潤いを与えながら汚れを除去できます。

使用方法は十分に湿らせたスポンジの先端で粘膜を拭います。拭う際には回転させながら行うことでキレイにとれます。汚れが付着したらその都度洗い流しながら使用します。使用後は衛生面を考慮し1度の使用で捨てましょう。

保湿剤

お口の中をケアする際には必ず潤った状態で行います。乾燥状態で行うと傷になりそこから感染が起こります。通常だと保湿剤を使用しないでも問題はないですが、高齢になり唾液が少ない方、投薬や病気により唾液分泌量が減少している方に保湿剤を使用してから口腔ケアを行うことをおすすめしています。

指やスポンジブラシに保湿剤を出しお口全体に塗布し、マッサージしながら行うことで唾液の分泌も促進することができます。

義歯ブラシ

義歯ブラシとは入れ歯を磨く専用の歯ブラシです。普通の歯ブラシと何が違うの?とよく言われますが、普通の歯ブラシと比べて毛が硬く効率よく汚れを除去できます。

また2種類の毛先があり全体を磨ける毛先が幅広いタイプと細かな部分や金属などの複雑な形態をしている箇所を磨くのに適した毛先のタイプがついているため、清掃能力が優れています。入れ歯を使用している方がいらっしゃればぜひセットで購入しましょう。

入れ歯洗浄剤

入れ歯を使用すると入れ歯からヌメリや臭い、着色が認められます。義歯ブラシと一緒に使用して頂きたいのが入れ歯洗浄剤です。ヌメリの原因であるバイオフィルムを除去し除菌、脱臭をし、発砲作用により汚れや着色を除去します。大きな汚れは義歯ブラシ、義歯に染み付いた汚れは入れ歯洗浄剤で対応していきましょう。

当院で使用している入れ歯洗浄剤「キラリ」では、ぬるま湯約150mlに1錠入れ、30分入れ歯を漬けおき洗い、その後義歯ブラシを用いて水ですすぎながら磨きます。清潔な入れ歯を使用するために1日1度の洗浄をおすすめしています。

唾液腺マッサージ

高齢者の中には加齢や投薬、病気により唾液が少ない方が多くいます。唾液の分泌量が低下することで味覚障害、嚥下障害、口腔乾燥、口腔内不衛生を引き起こします。

保湿剤を使用するのももちろんですが、唾液の分泌を向上するために日常的に行ってほしいマッサージがあります。それが唾液腺マッサージです。唾液腺とは顎下腺、耳下腺、舌下腺の3つが存在しそれぞれを刺激することで唾液の分泌を促進します。

  • 顎下腺親指で顎下の内側の部分を耳下から顎の下まで5回に分けて押して移動させます。
    5回から10回程度を目安に押していきましょう。
  • 耳下腺親指以外の4本の指先を用いて上の奥歯あたりの頬をマッサージします。
    顎下腺同様に5回から10回程度マッサージします。
  • 舌下腺舌下腺は下顎の内側の舌の付け根に位置し下から上へ舌を押し上げるようにマッサージします。
    5回から10回程行います。

「食べる」トレーニング

食べ物を飲み込む際にはお口の周り、首の筋肉を使用し喉を通過し食道へ送られます。高齢者になるとこの動作が難しくなるため機能を向上させるために嚥下体操が必要です。

嚥下体操を行うことで正常に飲み込むことができ、気管に入ることを防ぎ誤嚥性肺炎を予防できます。少しでも飲み込むのに不自由さを感じたら、嚥下運動を行い食事の楽しさを少しでも思い出して頂ければと思います。

  • 姿勢椅子に腰掛けリラックスします。
  • 深呼吸ゆっくり深呼吸し呼吸を正します。
  • 首の体操ゆっくり後ろを振り向く動きを左右行います。
    次に首を左右に倒して肩につけるように動かし、1周首を回します。
  • 肩の体操両手を頭上にあげて左右に下げます。
    次に肩を上げ下げします。
    さらに肩を前に後ろに動かし回します。
  • 口の体操口を大きく開けて閉じての繰り返し運動と口をすぼめ、笑う繰り返し運動を行います。
  • 頬の運動頬を膨らませ、すぼめるのを繰り返します。
  • 舌の運動舌を前にベーと出し左右の口角を舐め、鼻の下、顎の先を触る運動をします。
  • 発音の練習「パ・タ・カ・ラ」をゆっくりはっきりと発音します。
  • 咳払い気管に食べ物が入るときに咳払いすることで気管に入るのを防ぎます。
    練習で2,3回行いましょう。
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